= 3 歯止めなき攻撃性 =

【絶対に罪を認めない=我欲】

 

 今世紀、国家の共同システムで暗躍する醜い勢力は、そもそもどのような動機で醜・悪・偽の意思を抱くのでしょうか? 

 

●偽の動機:「嘘をつけば、金が儲かる」  

    ⇒ 素人が理解できない高度な知識を使って、欺してやる。    【研究・製造】

 

●悪の動機:「法のルールをゆがめれば、贅沢ができる」

    ⇒ 法の裏で偽と手を組み、儲けた金で贅沢・享楽してやる。   【行政・政治】

 

●醜の動機:「虚飾の芸術作品を作れば、大衆をだませる」

    ⇒ 悪の不正の隠蔽に手を貸し、虚報で大衆感覚を麻痺させてやる。【報道・芸能】

 

 分業化された高度な国家システムに属する各組織には、ある一定数の醜人がウイルスの様に存在するもの。高度な知識を使って金儲けしようと企む者、法のルールをゆがめて贅沢しようとする者、虚飾の報道によって儲けを狙う者の思惑が一致して、癒着が実現した場合、醜勢は悪・偽を巻き込んで混乱の種をまき広げます。 

 

【序曲;家庭崩壊】

  

  社会の共同システムの中で、自らの立場を利用して特別の便宜を計ってもらおうと癒着することに関して;

 

 たとえば、民主主義国家の場合、彼らは「法の樹木」に寄生し、不正の仕組みを作って私腹を肥やし、豪邸に暮らし始めます。不正資金を手に入れて贅沢をする醜人の家庭での暮らしぶりは、一体どのようなものでしょうか?

 

 醜人らは不正によって得た資金で夜遊びをし、愛人たちに赤ん坊を産ませ、その子の存在を無視する形で虐待する。模範となる大人に恵まれずに育つ子供たちは、人生の歩み方を知らないため、多くは社会に適応できず、やがて醜の勢力に巻き込まれたり、自殺をしたりしてしまうでしょう。 

 

【抑えきれない衝動と迫害】

 

 欲望むき出しの醜人らは、家族を虐待し、家庭を崩壊させていきます。 

 

 「......父の浮気が激しくなるにつれ、家族に対する態度がどんどんと横柄になり、妻は鬱病となって精神病院に収容される。ある日、一人家に残された娘は、悲しげな声で浮気をやめるように父に懇願した。峰岸は一瞬だけ、すまないと感じたが、次の瞬間に激しい怒りがわき上がり、まるで礼儀知らずの愚か者であるかのように娘に怒鳴り返した.....」【第4巻の一部】

   

【執着と妄想】

I have frequently seen people become neurotic when they content themselves with inadequate or wrong answers to the questions of life. Carl Gustav Jung
人生の問題に対し、不適切な解答や間違った解答で満足している人々が、神経症で病むのを私はたくさん見てきた。

 

 家族を虐待する醜人は「執着」により、激しい「妄想」を巻き起こす。前に述べた通り、彼らは崖っぷちに立ち、自らの魂を売って奴隷になった末に「自分の判断は正しかった」と信じて開き直り、結果として、自分を責める健全な人々を恨み始めます。

 

 それでいて、醜い人は社会への敵意をさらけ出す訳にもいかず、攻撃性を抑圧するので、人格をどんどんとねじ曲げます。また、不正発覚の恐怖が心から離れず、周囲の出来事をどんどんそれに関係づけていき、妄想を広げるため、自分を取り巻く環境と人々を完璧にコントロールしようとやっきになります。 

 

【破滅の恐怖と破壊願望】

 

 醜い人の心の世界では、抑圧された攻撃性が幾重にも積み重なり、不正発覚に恐怖する妄想がどこまでも広がってゆく。一瞬の判断ミスも自身の破滅につながりかねないため、他人を過度に警戒し、猜疑心が膨らむにつれて残虐性冷酷さが増し、周囲の人々への肉体的・精神的迫害も加速していきます。 

 

 この恐怖に支配された痛憤の中、彼らはゆがんだ感性を抱いて国家の運営に介入するため、人々の静かな暮らしが破壊され、経済衰退や公害による環境汚染などが問題になってくる。

 

 善良な人々が経済低迷の原因を追求し始めると、醜い人らは手に入れた金に執着して、周囲がすべて敵に見えるようになる。うまくいかなくなり始めた不正仲間の裏切りも恐ろしくなってきたので、身を守る最終手段として、「国家のシステムごと破壊して不正の証拠を隠滅しよう」と破壊願望を抱き始めます。   

 

【分業システムに潜む魔性】

Man should not ask what the meaning of his life is, but rather he must recognize that it is he who is asked. Viktor Frankl
人生の意味は問うのではなく、それを問われているのは自分自身だということに気付かねばならない。

 

 醜い勢力が国家システムの破壊を企んだ時、社会にどのような危険が生まれるのでしょうか?ここでは、アイヒマン実験について考えてみましょう。

   

 第二次世界大戦中、何十万ものユダヤ人を死の収容所に送ったナチス親衛隊アイヒマンの裁判が、戦後、イスラエルで行われました。彼は被告席に立ち、「上からの命令に従っただけです」と弱々しく繰り返す一見普通の小男、決まり文句のようなステレオタイプの官僚であり、悪意に満ちた怪物に違いないと想像していた傍聴人らは、彼のあまりの平凡さに驚愕します。

 

 実際、ホロコーストは、ユダヤ人たちの名簿作成・検挙・拘留・移送・処刑という分業システムの中で淡々と進められ、個々の担当者の責任は非常に曖昧な状況でした。 

 

 この裁判を知った心理学者のミルグラム(アメリカ)は、命令に服従する人間の心理を調べるため、アイヒマン実験をおこないます。その結果、組織が大きくなり、個々人の責任が曖昧になると、人間は自制心を鈍らせて善悪の判断を放棄し、盲目的な忠誠心をもって残虐行為に荷担できること、を突き止めました。 

 

【邪悪な命令という社会問題】

A curse of a villainy is at the place where that can’t help bearing vice all the time. Friedrich von Schiller
悪行の呪いは、絶えずそれが悪を産まざるをえないところにある。

 

 アイヒマン実験の結果を鑑み、現代社会の分業システムに潜む危険性を考えてみると、次のような予想ができます。 

 

① 分業化された社会システムの中で個々の責任が曖昧になると、人間は自制心を鈍らせ、他人の立場に立って考えることを拒否する。

② ほんの一握りの醜い人が上官として命令するだけで、それぞれの持ち場にいる平凡な部下たちは、「命令に従う」という名目で、盲目的に邪悪な計画に荷担する。 

③ 醜人らの影響が拡大により、萎縮し、生気に乏しい考えしか持てない社会人が増えると、国全体としての意思決定の品質が低下する。

④ 国家の意思決定力が低下し、国力衰退により民衆の不満が高まると、醜い芸術が創作され、戦争の危険性が高まる。