Some people think luxury is the opposite of poverty. It is not. It is the opposite of vulgarity. Coco Chanel
華美を貧乏の反対と考えている人がいるけど、それは違う。華美とは下品さの反対なのです。

= 2上界と下界を往復する自己意識 =

【美・善・真の光】

 

 私たちの自己意識が心の争いを収め、統率力をさらに磨くために内界の奥へと旅に出た時、そのかなたで出会うのは美・善・真の輝きです。私たち人間は、美・善・真の素晴らしさを感じることなく、本当の生きる意味を見つけられはしません。 人を人たらしめるのは心の本質的な働きであり、その心の世界に存在する6つのマインド機能がこれらの3つの価値と深くつながっているからです。  

 

  元来、人類は意識的・無意識的に、美・善・真を探求してきました。輝く宇宙にある美しい地球の環境に適応しながら、人の美しい行為を讃えたり、真実を求めたりして、人類の心のメカニズムが進化してきた故に、私たちの自己意識は、美・善・真に正統性を置くことで、内界の君主として、6つのマインド機能を従わせられるようになります。

  

【昇降する自己意識】

心の世界の構図
Composition of an inner world

 

 人間の自己意識が、美・善・真の価値を悟って、みずからの価値観や判断基準を構築してゆく場合、実際どのように心の世界が動くのでしょうか? 

 

 私たちの自己意識は、抽象的な上界レベル現実的な下界レベルとの2つの世界を行き来して活動しており、高き志を持つことと、日常の雑事に煩わされることは決して矛盾するものではありません。人の自己意識は、自身の肉体が暮らす人間世界は無節操だと知りつつ格闘し、どのようにしてよりよい世界に変えていけるかを考え、信念と希望を持って活動しています。

 

 この自己意識は、上界にある純粋な価値を混沌とした現実世界に下ろす取り組みの中で、美・善・真を探求し、心の統率力を強化しようとします。そして、自分らしい価値観を徐々に形成し、「2つの世界のどちらに重きを置くのか?」を思索しながら、外界環境に適応していきます 

 

【価値観のクオリティー】

 結果として、それぞれの人間が有する価値観のクオリティーは、自らの行動を決断する際における理由の中身によって決まることになります。その理由の中身をすべて洗い出し、上界に属するものと下界に属するものを振り分けてから、「両者の比率」を見てみると、たとえば、

 

【未熟な人間の意識】上界10%ー下界90%

【良識ある人間の意識】上界65%ー下界35% 

 

だったという具合になります。

 

 このような価値観のクオリティーは、人間的な成長や状況の変化によって変わっていくものとなるでしょう。 

 

【上界に輝く価値観】


 

 ここでは、善の探求を例に挙げて、さらに具体的に説明してみましょう。まず、私たちの自己意識は、理想の生き方を思索した時、上界に視線を向けて、人々が希望するより良い世界(理想の世界)をイメージします。この時、故郷の伝統文化にある美しい芸術作品思想哲学などが重要な役割を果たします。

   

 その者は、限りなく広がる人々の夢や願いを寄せ集め、さまざまな価値観(正義・愛・自由・平等など)に目を向ける中で、自分の性格や経験、生活事情などに配慮し、己にふさわしいと思う価値観を選択します。

 

 たとえば、ある青年が「弱きを助けて、正々堂々と生きたい!」と願い、自分の理念として「フェアネス」を掲げる、という具合です。この場合、上界にある「善」という普遍の価値は、フェアネス」という形になって下界に織り込まれていくことになります。

 

【下界に向かう自己意識】

  

 公平を理想に掲げた青年は、現実の世界にてさまざまなケースに対処する中で、迷い苦しみ、「公平とは何か?」と自問しつつ、上界にある「理想の世界」と下界にある「実践の世界」とを往復するようになります。なぜなら、

 

 ◆上界;抽象的な価値観は、生きた現実の豊かさを理解するのに十分ではない。

 

 フェアネスの意味を一般的にとらえすぎると、例外的なケースに対応できなくなる。そのため、その意味について、今に生きる人々はどのように考えて実際に行動をしているのかを、地に足のついた体験から確かめてみる必要性があります。⇒下界に向かう意識  

 

【上界に向かう自己意識】

 

 ◆下界;現実に直面する出来事には、さまざまな事情がある。

 

 現実の世界で、あまりに複雑で細かい個々の事情に入り込んでしまうと、状況が読めずに思考が停止してしまう。あるいは、直面するケースを超える問題の広がりを見逃してしまう。そのため、雑多な感情を切り捨て、より普遍的に「公平」の意味を考えてみる必要性があります。⇒上界に向かう意識

 

 このように彼の自己意識は、上界と下界を何度も何度も往復しながら、公平を貫くための方法を試し、自分の能力や性格に合う戦術を模索し、「フェアな行動を貫くためにはどうすればよいか?」を学んでいきます。

  

 フェアネスを通じて、彼は生々しい経験から得られた教訓反省点を整理する中で、至高の真理へと高まろうとする志を有して、自分なりの価値判断(善の内的基準)を固めていくことになります。

 

【人格形成の試金石】

Peace is more important than all justice; and peace was not made for the sake of justice,  but justice for the sake of peace. Martin Luther
平和はいかなる正義にもまして貴重なものである。平和が正義のためにではなく、正義が平和のために作られているのだ。

 

 善を探求する人間の自己意識は、揺れ動く心の世界を統制する一方、移り変わる世の中に適応する必要もあるので、必ずしも満足感が得られる結果になるとは限りません。

 

 千変万化の世の中では思い通りにならないことも多く、理不尽な思いをすることも多々あります。公平を掲げて努力する青年も、不運が重なった時期は、深く苦悩する中で、自分の歩む人生について、「そもそも公平を貫く生き方に意味があるのだろうか?」と自問する日もあるはずです。

 

・私は本当に何をしたいのだろうか?

・私は何者だろうか?

 

 と彼の自己意識が途方に暮れ、この世に自らが誕生した意味を意識的・無意識的に探し求める。そして、静かな場所で深く深く内省することで、心の世界に存在する6つのマインド機能に出会い、それらとの対話が始まることで、美・善・真の輝きに気付く糸口を得るに至ります 

   


【自分を悟る】

 

 心の世界に存在する6つのマインド機能は、感情・印象・気分・ひらめきなどとして訴えてきます。

 

・直感:敬虔な人

・精神:秩序を与える人

・思考:合理的な人

・愛情:人間味ある人

・集団:秩序を守る人

・肉体:活動的な人

 

 それぞれのマインド機能は異なる人格を映し出す中で、私たちの自己意識は、個々のマインド機能に対面し、彼ら彼女らの声を慎重に吟味する中で、美の価値や命の尊厳などについて、気づきを得ることで、自らの生きる意味を悟り、行動の覚悟も定められるようになります。  

 

 

 すべてのマインド機能を納得させられるような判断基準を構築してゆく努力の中で、自らの行動に関して「何をやるべきか?」の大義を得て重要な判断を下してゆくことは、自らの価値観を構築していく上で、極めて重要な要素になります。

 

【試練に立ち向かう】

 

 フェアネスを理想として努力する青年の自己意識は、上界と下界を何度も往復し、マインド機能と深く対話する中で自らを知り、内界の統率力を磨きつつ、自身の価値観のクオリティーを高めてゆくことでしょう。

  

 正しい道を歩む人間には、数多くの試練が待ち伏せています(正しい道⇒試練、誤った道⇒罰)。美しい芸術を推進する中で、ごまかしの利かない生き方を貫き、多くの試練をクリアすることで、私たちは自らを好意的に受け止めて瞳を輝かせ、健全な感覚を有して愚惑に陥ることなく、心の統一感を体得できるようになります  

 

理想社会の夢
We have always held to the hope, the belief, the conviction that there is a better life, a better world, beyond the horizon. - Franklin D. Roosevelt -
Honesty is the best policy.
正直は最善の策となる。