= 3 価値序列の構築 =

【心の本質に気づく】

 

 心の万象は、常に生成する相対的な思索であり、ものの見方が異なると、さまざまな解釈が生まれてきます。そのため、エスプリ画を描く場合は、各マインド機能に寄り添い、視点を変えながら、物事を考えるようにしてください。

 

 6つのマインド機能は、常にそれぞれの役割を果たそうと働き、意識的・無意識的な訴えをしています。たとえば、

 

直感機能:美しい自然に触れて感性を整えたい

精神機能:生まれ育った故郷の伝統を大事にしたい

思考機能:最新の専門書を購入して勉強したい

肉体機能:美味しいものを食べたい

愛情機能:娘にプレゼントをしたい

集団機能:会社の業績を上げたい

 

 という具合に、各機能は訴えており、かつ、それぞれが「自分の訴えは正しい」と考えているため、人間の自己意識は、各機能の意見をとりまとめながら、中心統合的な判断を行います。

 

【内界の枠組み】

注意深い観察眼
watchful eyes

 

 すべての機能の総和が生まれることで心の世界を調和させるのであって、どの働きも重要で伸ばすべきで素質になります。 あなたの自己意識がマインド機能の訴えによく耳を傾けて、各機能の性格の違いを理解すると、現実生活の中で未だなされていない事柄なども気付けるようになります。

  

 たとえば、思考機能を重視して合理的な判断ばかりをしていたある頑固な大学教授が、ふと愛情機能の訴えに耳を傾けてみると、愛情機能は彼の自己意識に対し、「そもそも、なぜ家族を愛さねばならないか?」と説明を始める。そして、彼の自己意識が愛の本質に気づくと、彼は愛情を大切にして生きていこうとする新たな意欲、将来の夢を抱き始め、家族を愛することが生き甲斐にもなり、厳格で厳しい態度から真心ある優しい態度に変わった、という具合です。  

 

 それは、彼の自己意識による内的統率力が高まったことを意味しており、すべてのマインド機能の意見を忘れずに受け入れることで、心の全体感を高め、すべての原理をその反対の原理によって抑制的なものに変えることで、人生観を成熟させることができます。

 

【クオリティの高い判断力】

  

 あなた独自の存在は、マインド機能をとりまとめ、心全体をまとめる中で高まります。あなたの自己意識は、各マインド機能の意見を取り上げてから、その場の状況に応じて、訴えを受理したり却下したりして、行動の優先順位を決めてゆくため、慣れないうちは感受的な不協和を体験します。たとえば、

 

 直観的な確信に従うため、思考の合理的な意見を却下する、あるいは、集団の利益を優先するため、個人的な愛をあきらめる、という具合に決断をすると、傍観の痛み、切ない諦め、あるいは、激しい懺悔を抱くこともあります。

 

 それらの思いをすべて受け入れるからこそ、私たちの自己意識は、自らの信念をかけてより力強い統率力を発揮し人生を切り開きつつ、自らがこの世に存在する意味を見つけ出そうと努力を重ねます。 

  

【潜在力の開花】


 

 心の世界にあるマインド機能は、遠い記憶が宿る内的な属性でありますが、人間の自己意識がそれぞれの機能の特有性を理解し、それらを活発に働かせると、今の時代に合わせながら自らの潜在能力を進化させられます。

 

 たとえば、愛し愛されたいと願う人間の愛情機能の特性を例に考えてみます。

 

 私たち人間が有する愛情機能は、原始・古代・中世・近代という時代の変遷を通じて、つまり、原始共産制・奴隷制・封建制・資本制という社会の生産様式の変化に応じて、愛情を交換し、愛の実現に悩みながら子孫をこの世に残し、人類の存続に貢献してきました。

 

 この愛情機能の深奥の部分は、その時代その時代の社会スタイルに合わせる取り組みの中で、時には、ときめきや喜びを歌い、時には、心の痛みを分かち合いながら、愛の形を整え、愛の寛容さを養いながら必然的に形成されたもの。

 

 よって、あなた(自己意識)が愛情機能の声に真摯に耳を傾け、その性格をより深く理解しつつ、上手に働かせると、今の時代に求められる形で自らの愛の形を整えながら、自身の愛情機能の潜在力を高めることができます 

 

【道を誤る構図】

 

 私たちは自分の生活事情や社会的な立ち位置などを考えることで、「何が自分にとって一番大切なのか?」という価値観を育んでいきます。また、私たちは我欲に悩まされて生活が混乱すると我欲を離れた境地に到達したいと考えます。

 

 その我欲は、一つのマインド機能の訴えに耳を傾けすぎることで生じる場合が多く、例えば、 夫が別の女性と不倫をするようになり、それに憤る妻の愛情機能が、夫の愛する娘に対してあてつけに虐待を始めた、という具合です。 

 

 この時、彼女の直感機能(悟りたい)や精神機能(社会貢献したい)は、愛情機能による虐待行為を止めるようにと彼女の自己意識に訴えますが、その自己意識が愛情機能にとりつかれてしまうと、忍耐を発揮できず、ためらいながらも虐待を続けることになってしまいます。

 

 このような苦しみを経て、人間は時として我欲を離れた境地というものが別にあると思いがちですが、実は心の世界の構造を理解していないのです。 

 

【ルールエスプリ画】

ルールエスプリ画のサンプル
ルールエスプリ画のサンプル

 

 心の中で自然に浮かぶこと(マインド機能)と心の中で思索してから表面に現すもの(自己意識)は異なります。この自己意識の決定の偏りを防止するため、ルールエスプリ画を制作して、あらかじめ自分の考えで自分の行動規範をまとめながら、6つのマインド機能ごとに理想の価値観を定めていきます。

 

 このエスプリ画は、あなたの思想的核心となって、自身の価値序列を示す一方、あなたの自己意識がすべてのマインド機能に向き合う習慣をつけます。そうすることで、あなたは一時的な思想的混迷がとる曲折を経験しながらも、全方位的視野で物事の本質や道理を考え、思想的な打開の道を見つけようと努力できます。 

 

 それは同時に、自分の心の世界に存在する相対性を認識する一方で、深淵にある各働きの役割を探って意識化することになり、あなたは各マインド機能を総花的に取り扱うようになることで、自分自身の立場を安定できるようになるでしょう。