自己一致
congruence of self

=  7 多様性の意義深さ =

【乱世生まれの政治哲学】

 

 私たち人類は、それぞれの思想を中心統合させて地球全体の秩序を作るため、まず「人類の心」を育て、次ぎに、その大きな心に自己意識を誕生させる必要があります。その改革には多くの困難が伴うでしょうが、まず始めに、紀元前の乱世に生まれた「富国強兵」という考え方が、一番の障害になるはずです。

 

 「それぞれの国の価値観が異なるから、争いが起きる。争いに勝つためには、武力が必要。武力を高めるためには、国を豊かにすべし」 

 

【老害な思想の払拭】


 

 大小いくつもの国が乱立する古い時代に生まれたこの思想は、「一国が力を得て戦争を終結させれば、平和が訪れる」という当時の思想家の願いから生まれたものですが、高度に発達した現代の世界ではむしろ危険な思想と言えます。 

 

・一国が大きな富を得ると、国家のシステムを悪用する醜い勢力が凶悪化する。

・一国が大きな富を求めると、外交紛争の原因を作る。

・凶悪化した醜い勢力が高度な科学力を乱用して利益を誘導すると、生態系の破壊を招く方向へ向かう。 

・高度な化学兵器で生態系が破壊されると、地球の営みそのものが持続できなくなる。

  

*詳しい説明は、後ほど醜い芸術の量産時代で行います。

 

 どのような思想も大衆に向き合いながら、世の中の安定を願っている。しかし、結局、美(生命の繁栄)を前提としなければ、舵の取り方で、良くも悪くもなってしまうものです。

 

【一マインド機能が主導する危険性】

 

 人間の自己意識が6つのマインド機能を統制することで心の世界を安定させられるという観点に立つと、世界の安定を一国家の価値観(一マインド機能)の支配によって成し遂げようとする考え自体にも無理があります。

 

 個人の心の世界では、もし自己意識が一つのマインド機能ばかりを頼り、他のマインド機能を軽視し始めると、その心が硬直化し、傲慢、偏見、虚栄心などのネガティブな感情を生み出してしまいます。【第4巻】

 

 個人レベルの心の世界で生じることは、国家レベルでも生じ得ます。たとえ、武力による世界統一(肉体機能による支配)が成立したとしても、その世界体制に暮らす人々の愛情機能が低下して柔軟性や慈愛さがなくなり、弱者ばかりを相手に暴力を振るう冷酷さや卑劣さが出現します。

 

 このような世の中では、たとえ世界統一が実現できたとしても、人々の心は混乱し、それらの心の不調和が世界の体制に映し出されて、システムの分裂を招き、結果的に、内部崩壊と武力衝突による戦乱を招くようになるでしょう。 

 

【6機能による互恵的調和】

 

 では、心の世界にある6つのマインド機能によるバランスとはどのようなものでしょうか? 健全な人間の心の世界は、あるマインド機能と別の機能の働きが対立的な性質を有しつつも、矛盾することなく共存し、互恵的な均衡を保っています。たとえば、

 

■思考機能の合理的な考えに基づき、効率ばかり重視して、何が大切なのかを見失いそうな時、直感機能は本質的に何が大切なのかを教えてくれる。

 

■集団機能による競争意識によって、ライバルと争う気持ちが高ぶった時、精神機能による理想の社会を実現させようとする志が、高ぶる競争心を静めてくれる。

  

■愛情機能による優しさによって、憐憫の情に溺れそうになる時、肉体機能の生存の意欲は、心を現実に引き戻してくれる。  

  

という具合です。人間の心の世界では、通常、人の自己意識が司令塔の役割を担って判断を下しますが、マインド機能同士が互いに影響を及ぼすことでバランスが保たれる一面もあります。

 

【価値観の異なる戦いが残したもの】

 

 さきほどお話した冷戦時代、心の集団機能(共産主義)が誘導する国家が現れ、思考機能(資本主義)と対立しました。その結果、双方の国に暮らす人々の価値観は、どのように変わったでしょうか?

 

 互いの国家は、秘密裡の情報収集や謀略活動などを進めて、それぞれ敵国の国民らに影響を与え合いました。この結果共産主義国家(権力は労働者)では、正論を告げたことで支配階級から迫害されてきた科学者の地位が回復した。一方、資本主義国家(権力は合理的知性)では、資本家階級から長時間低賃金の労働を強いられてきた者たちの労働環境が改善した。  

 

 つまり、価値観の異なる国家同士が対立したことで、双方の上層階級による国民らへの人為的強制力は弱まり、人々が抱く価値観は、より健全で調和のある方向に向かった、と言えます

 

 その一方、国家同士の争いで国内が混乱すると、醜い勢力の不正が横行して、戦争勃発の危険が高まる面もあると言えるでしょう。

醜い芸術の量産時代を参照)

 

【納得できる判断】

  

 私たち人間の心は、6つのマインド機能が健全に働くことで、互いに補完しあい、正常なバランスを保っています心の多様性を認めることで、私たちは価値観が異なる人々の中にも真理が存在することが分かり、謙虚さ、思いやり、忍耐力を働かせられるようにもなります。

 

 個々の価値観の良い面を見抜き、それらを自分に取り入れることで、人生をより多彩で意味深いものとすることもできます。そして、世の中に存在する矛盾を解消し、紛争の調停者となって世界を平和に導くはずです。

 

 逆に、私たちの自己意識が一つの欲に迷わされて、一つのマインド機能の働きに頼りすぎると、他のマインド機能の役割を軽視して、他の価値観の悪いところを指摘することで、自分の価値観の大義を示し始めるでしょう。

 

 結果として、その者の自己意識は、物事の道理を正しく見極めることができなくなり、自らの心の世界の統制力を弱め、その不安定な内面が外界の問題をより複雑に不安定にしていきます。 

 

【調和の妙と大いなる意思】

  

 私たちの自己意識は、自分の心の世界が分からなければ、現実世界を知ることもない。心の世界で、自身(自己意識)が6つのマインド機能の役割を尊重し、機能同士の均衡を保つことで、内界の調和を築いています。揺るぎない世界の平和を確立するためには、この心の世界の仕組みを人間社会に導入する必要があります。

 

 歴史上、多様な芸術作品が創作されて、世の中のすべての要素が表現の中に組み込まれて、人々の生きる意味が問われる中で、芸術の創造は千万の思想を生み出して、広がり散った。それらが個々の国家のあり方に影響を及ぶす中で、様々な思想は離合集散し、結果として、6タイプの国家を誕生させるに至った。ただし、これらの6タイプの国家は、果てのない争いを続けている。

 

 今世紀、私たちがすべきことは、人類の自己意識を誕生(世界政府?)させ、それが個々の思想を統合させる最高の思想(美)を掲げる一方で、6タイプの国家の価値観を尊重し、異なる価値観を抱く国家同士の均衡を保てるようにすることで。 

 

 6タイプの国家の価値観を尊重することで生まれる、均衡の約束は日々果たすべきものとなるでしょう。そのためには、常に互いを尊重し合わなければならない。それが難しい時も、特に困難な時もです。

 

 

After climbing a great hill, one only finds that there are many more hills to climb. Nelson Man
大きな山に登ってみると、人はただ、さらに登るべきたくさんの山があることを見出す。dela