一時間の浪費をなんとも思わない人は、人生の価値をまだ発見してはいない。
A man who dares to waste one hour of time has not discovered the value of life. Charles Darwin

= 13 透明な表現の自由 =

【自分自身を知る】

 

 あなた自身の芸術(ミーアーツ)は、あなたの物語を創造する契機であり、自らの体験を語るための手段でもあります。その表現は自発的なものであり、一つには自身の成長のために、一つにはそれを伝える人に思索の宝と生きる意味を与えるものを生み出すという意欲のために行なわれます。

 

 また、美しい芸術における自己表現を通じて、自分自身知ることは、エスプリデッサンの重大なテーマでもあります。自分の体験を表現するとは、自らの心を真摯に受け止めて、自らの人生に向き合うということ。

 

 うわべの表現だけを求めても美しい芸術は得られず、ほんの少しでも気が引けると、真実は姿を見せません。たとえ、それが自身に苦痛な真実の告知であっても、実質を捉えるがゆえにあなたの感性は動き出し、精力的な気分を満足させてくれるでしょう。

 

【民心を知る】

秩序感覚
a sense of order

 

 自らの尊厳をかけて芸術作品を創り上げたなら、それをネットなどで展示し、世界の人々に伝えましょう。自身の体験から生まれた生々しい思いを描写する中で、内なる情感・見解・思想などを表明し、それに対する他人の意見や評価を把握することで民心を知ることができます。

 

 また、同じような痛み、思い、価値、そして希望をもつ人たちの共感を生み、心がつながり、志を共にする可能性に配慮しましょう。そうすることで、自民族や他民族の属する世界についても、より深い思索と配慮に気を配りながら、作品の正当性や信頼性を確証できるようになります。 

 

 芸術の創作を通じて時間を有益に使い、「自分の作品を展示することで、わずかであっても世界が違うものになるよう人生を生きた!」と感じて納得できれば、申し分はありません。美しい作品の展示は、後に続く世代に胸に宿る遺志を伝えていくことにもなり、あなたの自己意識に深い意味を与え、清々しい喜びにもなるからです。  

 

【苦悩から生まれる希望】

 

 「どんな作品を展示することで始まりとし、何を表現することで満足とし、何をもって終わりとするのか?」 創作した自らの作品を展示し、人々の反応を確かめながら、どの様に自分の気持ちに折り合いを付けてゆくのかを、自らの意思で決めてみるのが、表現の自由と言えるもの。

 

 長い人生においては、偶発的な悲劇に見舞われることもあるでしょう。自分にふりかかってきた不条理な出来事に対し、「何故、こんなことが起こったのか?」と呆然としていると、その不幸な出来事しか見ることができません。

 

 そ悲劇に対する「怒り」をただ抑え込む、あるいは、感情にまかせて表現するだけでは苦悩から抜け出せません。自分の身にふりかかった問題に冷静に立ち向かい、複雑な社会構造や人間の心理を掘り下げながら、陰々とした記憶を乗り越えて、一つの物語を構築してゆく。

 

 世界に目を向けて、「人々に何を伝えればよいのか?」を明確にし、想像を交えた物語の創作を通じて、自らの気持ちを整理する一方、作品自体に表現される意味、真実、何かしらの前向きな教訓が宿り始めると、未来に目を向けた芸術意欲も高まってきます。 

 

Even if our efforts of attention seem for years to be producing no result, one day a light that is in exact proportion to them will flood the soul. Simone Weil
たとえ歳月を重ねた奮闘努力が、少しも報われないと思えるときでも、いつの日か、その努力にちょうど見合うだけの光が、あなたの魂にみなぎるものです。

【相反する感情の余韻】

  

 誰かに言わされたのではない、自分の中から出てきた言葉、心からの本音は、たとえ、それがささやかなことであっても、あなたの尊厳を映し出し、人々の心を揺り動かすでしょう。

 

 一方、芸術家を初めとする人々の6つのマインド機能は、それぞれが両極的な性格を有しつつも、心の世界で共存しており、そのどれもが人間の自己意識にとっては、本当の感覚といえるため、自分の本当の気持ちを示したり、何か重大な決断をしたりした場合、相反する感情による沈痛が残ったりするもの。

 

 その心の痛み、やりきれない思いを抱き、さらにその思いを受け入れるからこそ、私たちの自己意識は、自らの体験を自らの信念をかけて表現し、自らがこの世に存在する意味を確認しようと表現の努力を重ねようとします。

 

 それが全人格的統合感と言え、あなたは自身の複雑な感情を整理する中で、「自己意識による心の統合とはいかなるものか?」「6つのマインド機能の互恵的均衡とはいかなるものか?」を学ぶことができます。

 

【多様な世界にて人生を悟る】

Defeat in this world is no disgrace if you really fought well and fought for the right thing. Katherine Anne Porter
ほんとうに正しいことのために戦ったのなら、負けても恥じることはない。

 

 ただ漫然と自分の価値観を定め、自己表現を通じて自分の立場を周りに示すのではなく、美を尊重する中で、「変わりたい」という自分の気持ちを後押しするような表現、自分の世界観をのびやかに演出できる余白のある生き方などにも考慮して下さい。

 

 あなたという芸術家は、すべての他人を納得させる必要はありません。ただ、自身の芸術を通じて真実を求め、美しさの価値を称えることが重要であり、今までの表現活動がすべて意味のある大切なことだったことに喜びを覚えることができれば、あなたはこの世の一切がかけがえのない存在として己が生きていることと感じられるでしょう。

 

 このようにして、の人生を整えていくと、やがて、「澄んだ心で美しいものを眺められる幸せ!」に感謝できる日が訪れるはずです。