= 11 透明感ある表現の自由 =

君の胸から出たものでなければ、人の胸をひきつけることは決してできない。
You'll never speak from heart to heart, unless it rises up from your heart's space. Goethe

【不正のライフサイクル】

 

 人類の歴史において、腐敗した国家という土壌に生じる戦争のは、どのように生まれてきたのでしょうか? 

 

 通常、国家の営みには「不正のライフサイクル」というものがあり、「導入期」→「成長期」→「成熟期」→「衰退期」という4つの段階をたどります。

 

①導入期

 一部の権力者が不道徳心を抱き、不正を通じた利益誘導により私腹を肥やし始める

②成長期

 悪人は仲間を増やし、醜・悪・偽の癒着により、共同システムに関するルールの改悪が進む

③成熟期

 国家の潜在的悪人たちに不正が行き渡り、共同システムが硬直化すると、経済が低迷する

④衰退期

 国家腐敗と経済低迷により、国民の不満が高まると、悪人たちは国家システムの破壊を企む

  

 この衰退期になると、「戦争」「革命」、あるいは、類似の出来事が勃発して、現存する国家システムが破壊されます。そうすることで、一つのサイクルは終演を向かえ、新たな時代へと突入することになります。 

  

【戦争と分断vs革命と団結】

暴力は権力が危うくなると現れてくる。
When power becomes dangerous, violence is showing. Hannah Arendt

 

 国家の衰退期に起きる「戦争」「革命」かの分岐点は、善人の勢力と悪人の勢力の力関係次第となります。

 

 悪人たちは不満を抱く人々が団結するのを恐れ、人種差別・性差別・所得格差・地域紛争などを意図的に生み出して、国民の分断を図ろうとします。また、国家が衰退期では、醜い芸術を量産し、純粋な青年たちを巧妙に欺して、戦場に送り出し、この世から消し去ろうとします。

 

 一方、醜い悪人の企みに気づいた芸術家や哲学者などが、世の中の秩序を正し、平和を取り戻すために美しい芸術や善い哲学を推進して、人々に訴えかけることがあります。

 

 善人たちが心を寄せ合って一本の旗を掲げ、平和のための新たな理念を抱いて団結できれば、彼ら彼女らは理想国家樹立のために「革命」を仕掛け、腐敗した権力者たちを厳罰に処して、新たな国家を樹立するでしょう。 

  

【歴史の現在地を悟る】

 

 これらの戦いは、いくつもの歴史の転換点を作り上げてきました。それと同時に、下記のような副産物をも生み出してきました。

 

・醜の勝利によって、よどんだ瞳の悪人たちは「大量破壊兵器」という道具を獲得した。

・美の勝利によって、輝く瞳の善良な人々は「表現の自由」という権利を獲得した。

 

 国家の「大量破壊兵器」製造により、次なる世界戦争は人類の滅亡に至る可能性があります。あるいは、戦争を招かないにしても、権力を手にした悪人たちが直接国民に向けて破壊兵器を使用する可能性が残ります。

 

 一方、「表現の自由」により、世界の芸術交流は人々の心をつないで持続可能な地球を導く希望を生みました。 人々はネットワークを通じて心を寄せ合い、暴力的な革命ではない手段で、悪人らに対抗することが可能になりました。 

 

【文明の法的限界域】

 

 近年、高度科学の進歩と多様な産業の発展を通じて、社会システムがより複雑に細分化された結果、個々の専門家の役割を単純に把握できなくなりました。この情勢下、悪人たちが責任の所在を意図的に不明確にし、違法すれすれの行為を犯すことが容易になり、彼らの不正による国家腐敗の速度は昔よりは早まっていると考えるべきです。

 

 また、国家機関への国民の目も届きにくくなったため、十分な議論がされないまま法律が勝手に作られる、あるいは逆に、必要であろう国家の法整備が後手後手に回ってしまう、と言う状況にあります。  

 

【美の守護】

 

 芸術や哲学の支えがないまま、高度な科学を国家が扱うこと自体に限界があります。人々の美的表現が美しい芸術を推進し、理想社会や現代人としてのあるべき生き方を模索する中で善い哲学を生み出す。その哲学を通じて、世界創りのためのルール、道徳的で公正なルールを構築し、そのルールの下で真の科学の発展に努める。そうすることで、私たちの世界は持続可能になるでしょう。  

 

 美は平和繁栄へ至るための唯一の道です。私たちは美の価値を再認識し、その価値を守護する必要があ

ります。私たち民主国家の国民は、幸いにして表現の自由(事実・意見・感情などの情報を伝達し受け取る)という権利を有しているので、この権利を最大限に活用することが大切になります。 

 

【ありのままの心と感覚】

 

  本来、宇宙の秩序に正統性をおいて人間社会を作るスタンスが文明の根底にありました。 そのようなコミュニティでは天体の動きが重視され、人々は社会は自然の恵みによって成り立つという思い、自然の美しさを尊重する感覚、そして、天然資源を守る意志を抱いていました。

 

 古い時代の祖先たちのように大自然を崇拝することはないにしても、最低限、私たちは現代の法律制度だけでは文明の発展に限界がある、という事実に気づくべき時期に来ています。

 

 美しい自然に触れて自らの健康な肉体と冴える直感を大切にし、ありのままの心に向き合って美しい芸術を創作すると、古代人が備えていたような美意識がよみがえってきます。それは美しい大自然の癒やしであり、朝と夜が繰り返される中で感受する「持続可能」という素朴な感覚です。