= 9 歯止めなき攻撃性 =

【絶対に罪を認めない=我欲】

 

 今世紀、国家の共同システムに寄生する悪人たちは、そもそもどのような邪悪な動機で醜・悪・偽の意思を抱くのでしょうか? 

 

●偽の動機:「嘘をつけば、金が儲かる」  

    ⇒ 素人が理解できない高度な知識を使って、欺してやる。  【研究・製造】

 

●悪の動機:「法のルールをゆがめれば、贅沢ができる」

    ⇒ 法の裏で偽と手を組み、儲けた金で不倫してやる。    【行政・政治】

 

●醜の動機:「虚飾の芸術作品を作れば、大衆をだませる」

    ⇒ 悪の不正をごまかすため、大衆の感覚を麻痺させてやる。 【報道・芸能】

 

 分業化された高度な国家システムに属する各組織には、ある一定数の悪人がばい菌の様に存在するもの。高度な知識を使い金儲けしようと企む者、法のルールをゆがめて贅沢しようとする者、虚飾の報道によって儲けようとする者の思惑が一致して、癒着が実現した場合、醜・悪・偽の探求を深めていきます。 

 

【序曲;家庭崩壊】

  

  社会の共同システムの中で、それぞれ立場の異なる者(研究・製造・行政・政治・報道・芸能など) が、自らの立場を利用して特別の便宜を計ってもらおうと癒着する。たとえば、民主主義国家の場合、彼らは「法の樹木」に寄生し、不正の仕組みを作って私腹を肥やし、豪邸に暮らし始めます。

 

 不正資金で贅沢をする破壊者たちのいる家庭は、どのようなものでしょうか?

 

 破壊者たちは不正によって得た資金で夜遊びをし、愛人たちに赤ん坊を産ませ、その子の存在を無視する形で虐待することが散見されます。模範となる大人に恵まれずに育つ子供たちは、人生の歩み方を知らず、やがて法のルールを踏み外してしまうため、悪人たちが多く住む地域社会のモラルまでが低下していきます。 

 

【抑えきれない衝動と迫害】

 

 欲望むき出しの悪人たちは、家族を虐待し、家庭を崩壊させていきます。 

 

 「......父の浮気が激しくなるにつれ、家族に対する態度がどんどんと横柄になり、妻は鬱病となって精神病院に収容される。ある日、一人家に残された娘は、悲しげな声で浮気をやめるように父に懇願した。峰岸は一瞬だけ、すまないと感じたが、次の瞬間に激しい怒りがわき上がり、まるで礼儀知らずの愚か者であるかのように娘に怒鳴り返した.....」【第4巻の一部】

   

【執着と妄想】

人生の問題に対し、不適切な解答や間違った解答で満足している人々が、神経症で病むのを私はたくさん見てきた。
I have frequently seen people become neurotic when they content themselves with inadequate or wrong answers to the questions of life. Carl Gustav Jung

 

 家族を虐待する悪人は「執着」により、激しい「妄想」を巻き起こす。彼らは世間から不正を追及されて崖っぷちに立つと、自らの魂を売って奴隷になった末に「自分の判断は正しかった」と信じて開き直り、自分を責める善良な人々を恨み始めました。

 

 それでいて、悪人たちは社会への敵意をさらけ出す訳にもいかず、攻撃性を抑圧することで、人格をどんどんとねじ曲げていく。不正発覚の恐怖が心から離れず、周囲の出来事をどんどんそれに関係づけていき、妄想を広げるため、自分を取り巻く環境と人々を完璧にコントロールしようとやっきになります。 

 

【破滅の恐怖と破壊願望】

 

 心の死んだ奴隷たちの曇った瞳の奥では、抑圧された攻撃性が幾重にも積み重なり、不正発覚に恐怖する妄想がどこまでも広がってゆく。一瞬の判断ミスも自身の破滅につながりかねないため、他人を過度に警戒し、猜疑心が膨らむにつれて残虐性冷酷さが増し、家族に対する肉体的・精神的迫害も加速していきます。 

 

 この恐怖に支配された痛憤の中、悪人たちはゆがんだ感性を抱いて共同システムに介入するため、美しい自然や人々の暮らしが破壊され、公害による環境汚染や経済衰退などが問題になってきます。

 

 そして、善良な人々が国家腐敗の原因を探して、変革の試みを始めると、身の危険を感じた悪人たちは、自身を守る最終手段として、「国家のシステムごと破壊して不正の証拠を隠滅しよう」と破壊願望を抱き始めます。   

 

【分業システムに潜む魔性】

人生の意味は問うのではなく、それを問われているのは自分自身だということに気付かねばならない。
Man should not ask what the meaning of his life is, but rather he must recognize that it is he who is asked. Viktor Frankl

 

 悪人たちが国家システムの破壊を企んだ時、社会にどのような危険が生まれるのでしょうか?ここでは、アイヒマン実験について考えてみましょう。

   

 第二次世界大戦中、何十万ものユダヤ人をガス室に送ったナチス親衛隊アイヒマンの裁判が、戦後、イスラエルで行われました。彼は被告席に立ち、「上からの命令に従っただけです」と弱々しく繰り返すだけでした。巨悪な怪物に違いないと想像していた傍聴人らは、彼があまりにも平凡な小役人だったために驚愕します。

 

 実際、ホロコーストは、ユダヤ人たちの名簿作成・検挙・拘留・移送・処刑という分業システムの中で淡々と進められ、個々の担当者の責任は非常に曖昧な状況でした。 

 

 この裁判を知った心理学者のミルグラム(アメリカ)は、命令に服従する人間の心理を調べるため、アイヒマン実験をおこないます。その結果、組織が大きくなり、個々人の責任が曖昧になると、人間は自制心を鈍らせ、善悪の判断を放棄して残虐行為に荷担できること、を突き止めました。 

 

【悪の命令という社会問題】

悪行の呪いは、絶えずそれが悪を産まざるをえないところにある。
A curse of a villainy is at the place where that can’t help bearing vice all the time. Friedrich von Schiller

 

 アイヒマン実験の結果に照らして、現代社会の高度な分業システムを考えてみると、次の5つの危険性が考えられます。

 

① 分業化された社会システムの中では、個々の責任が曖昧になるので、人間は自制心を鈍らせる。

② ほんの一握りの悪人が上官として命令するだけで、それぞれの持ち場にいる平凡な専門家たちは、「命令に従う」という名目で悪に荷担させられる。 

③ 醜・悪・偽を探求する悪人たちは、分業システムのさらなる利用を考え、「法の樹木」を食い荒らす。

④ 「法の樹木」が食い荒されるほど、社会全体としての意思決定の品質が低下する。

 社会全体としての意思決定の品質が低下すると、経済が低迷し「醜い芸術」が創作されやすくなる。