事故の原因は、事故そのものよりも興味深い。
The cause of the accident, interesting than the accident itself. Cicero

= 8 醜・悪・偽の正体 =

【マインド機能の一斉蜂起】

 

 エスプリデッサンを通じて、マインド機能の本質的な働きを深く理解できる様になると、他人の心の世界の様子までも観察できるようになります。通常、私たちの自己意識は、心の力強い統率を目指していますが、その反対に、自己意識の統率力が弱まると心の世界でどのようなことが起こるのかを観察してみましょう。 

 

 ここでは、不正を働いた財務官僚が国会の証人喚問で白々しい嘘を言い、民衆から嘲笑された場面を想定してみます。彼の心の世界で、いったい何が起こっているのでしょうか?  

 

直感機能:不正に関与するなと警告したのに無視するから、こうなったんだ。(後悔)

精神機能:故郷の誇りに傷をつけた。(嘆き)

思考機能:真実を偽るために働かされた。(怒り)

肉体機能:喚問の準備で徹夜し、疲労が溜まった。(むなしい)

愛情機能:この機会を狙って、妻は離婚を決意するかもしれない。(不安)

集団機能:組織にいる部下たちが俺を嘲笑していた。(憎しみ)

 

という具合に、彼の自己意識が不正に手を染め、美・善・真(宇宙の調和)に反することで自らの行動の大義(内的基準)を失ってしまうと、6つのマインド機能が一斉に反抗を始めます。

  

【げっそりな自己崩壊感】

 

 彼の自己意識は内的統率力を弱め、それぞれのマインド機能の騒ぎも静められなくなるため、心的エネルギーの消耗が激しくなります。人々から不正を追及される中で、彼は自分を尊い存在だと思おうにも拠り所がないため、自問をすれば限りない自己軽蔑に陥るばかりです。

 

 加えて、理論編でご説明したとおり、心の世界にて自己意識が不自由になると、エネルギーの産出も減ってしまうため、やる気の減退も著しくなります。彼の自己意識は、今を逃げ切ることに精一杯になり、心の疲労が重なる中で、己を律する意思が砕けて、自分で考えることも、感じることも、未来をイメージする力も失っていきます。

 

【魂の売却儀式】

人の人生で最大の悲劇は、生きてはいても、彼の内部で何かが死んでいることだ。
Life at the maximum of the tragedy of the people, even if the stomach alive, but something his inside is dead. Henry David Thoreau

 

 本質的な過ちを犯した彼の自己意識は、その日その日のできごとにどうにか対応する中で強い劣等感を覚え、下界の激しい濁流にどんどんと飲み込まれていくと、現実離れをして霧の中に入っていきます。

 

 もうろうとした彼の自己意識は濁流から必死にあがいて霧がかった岩山を登ると、今度は崖っぷちに立たされます。そして、暗黒の霧が薄れていくと、邪悪(醜・悪・偽)の力が現れ、魂の契約を結ぶようにと催促します。 

 

 ◆時として、破壊者の自己意識は心にわずかな光を残しており、己の魂だけは売りたくないと抵抗するが、自らの罪を認めて人々に謝罪することも拒否し、進退がきわまった末に崖から飛び降り自殺をする。 

 

 ◆また時として、破壊者の自己意識は、邪悪な力に命乞いをし、自らの血を紙切れに垂らして署名して、己の魂の売却を認めてしまう。

 

【魂のない奴隷の屈折】

 

 自らの魂を売って心が死ぬ。それは彼の自己意識が意志決定権を完全に失い、心の世界の君主から、邪悪な力に屈した奴隷になり下がったことを意味します。彼の自己意識がリーダーとして自らの心を統率していたとき、彼は自身の判断基準を構築し、将来の目標を定め、行動の優先順位を考えながら、自分らしい生き方をしていました。 

 

 しかし、今の彼の内面は無秩序であり、自分自身で感じて考え、判断するというよりも、むしろその場その場でなんとか反応しているといった状態になります。突如、「その生き物を殺せ!」といった邪悪な声が心に響く時もあり、自らの存在に不安を覚え始めます。

 

 彼の目からは輝きが消え、寝ても覚めても胃に不快感を覚えるため、顔色も悪くなってきます。不気味な人相になった男は、やがて、開き直り、邪悪な命令につき動かされながら、醜・悪・偽の探求を今まで以上に、そして淡々と進める様になります。

 

【欲望・恐怖・憎悪の情念】

 

 魂の抜けた人間は、裏口を巧妙に通り抜け、意地汚く弱者を食いものにし、厚顔無恥で往生際が悪い。彼らは、外界にて不正による資金獲得とその証拠隠滅の策略を進める一方、自己弁護の理由書を作り始めます。

 

・人間はすべて自分と同じようなもの

・勝つためには、どんな手段を用いても許される

・部下や政治家も共犯者なので、不正は絶対に隠し続けられる

・不正をして資金を得たからこそ、夜を楽しむことができる

  

 この貪欲で低級な奴隷たちは、「自分の判断が正しかった」と信じて開き直ります。そして、「正しい自分を責める社会の方が間違っている」と考え直すことで、善良な市民を恨み、憎悪し、復讐を企むことで自分を震え立たせ、邪悪な力にエネルギーを与えることになります。 

 

【邪悪な力の本質】

 

 悪人の心の世界に邪悪な力が住み着き、その邪悪な力に悪人の歪んだ意識がエネルギーを与えていきます。このように人間の心の世界に寄生する邪悪な力は、そもそも何を企んでいるのでしょうか? 

 

 無限の宇宙において、美・善・真は「大いなる調和」を、醜・悪・偽「大いなる不調和」を導く存在。つまり、邪悪な力の本質は、美・善・真の正反対だと解釈できます。

 

◆美:生命を繁栄に導く力【美しい芸術】

◆善:世界を平和に導く力【善い哲学】 

◆真:文明を発展させる力【真の科学】

 

◆醜:生命を滅亡に導く力【醜い芸術】  

◆悪:世界を戦争に導く力【悪い哲学】 

◆偽:文明を破壊させる力【偽の科学】 

 

喜びとは、魂を捕まえられる愛の網なのです。
Joy is a net of love by which you can catch souls. Mother Teresa