通常、私たちは子供の頃、故郷の土地に共有された文化的な価値判断や法のルール(外的基準)に実直に従って育ちます。けれども、美・善・真の探求を通じて、自らの価値判断(内的基準)を強化する中で視野を広げていくと、社会的基準と自らの内的基準を対比する心理のあやが生じてきます。
人間の澄んだ心が感じる美・善・真の価値観は純粋なものですが、世人の抱く価値観には多くの不純物が混じっているからです。
そして、その健全な自己意識が美的感覚の鍛錬を通じて、その視野をさらに大きく広げていくと、やがて、内界と外界とを天秤に掛けて宇宙全体を感じとれる時期がくるでしょう。
これとは逆に、人間は不純な偽りを真実であると履き違え、それらに執着するほど、視野が狭くなって現実の混沌に巻き込まれていきます。
修練を積んで創造的に成長した人間の自己意識は、心の世界にある6つのマインド機能が、美(直感・肉体)、善(精神・愛情)、真(思考・集団)と深く関係して、芸術、哲学、科学の活動を促している事実を認識できるようになります。
その自己意識がさらに進歩し、それぞれのマインド機能を巧みに統率した上で、マインド機能の存在する次元を超越する領域に入ると、「宇宙における個々の活動には何らかの関連性が存在しており、すべてのものは一つの調和の中で美しく輝く」と達観できる境地に至ります。
それは、内界の働きと外界の働きとが同時に存在する空間全体に関する一つのヴィジョンを得た境地、現世の動きに囚われない絶対美の境地、と言えます。
私たちの自己意識が外界と内界とが同時に存在するヴィジョンを得ると、美・善・真の深い意味を悟り、心の世界に価値序列(美>善>真)を築けるようになります。
◆美の価値:生命の繁栄
◆善の価値:世界の平和
◆真の価値:文明の発達
たとえば、美と善の関係について、本質的に考えてみましょう。
(本質;小さな例外は捨てる)
地球生命の繁栄(美)は、大自然の豊かな恵みを人類にもたらすことで世界の平和(善)の発展に貢献する。一方、世界の平和(善)によって人類が繁栄したとしても、公害や食糧問題を引き起こすなどにより、地球生命の繁栄(美)に寄与するとは限らない。故に、美>善となる。
この美・善・真の価値序列を理解したあなたの自己意識は、自らの感性・心性・知性の重要性を整理し、また、6つのマインド機能の働きをより深く考察できるようになります。
我々人類は、何に根ざしており、どのように進むべきか? この答えを美・善・真の本質は教えてくれます。
美・善・真の探求を続け、絶対美の境地に至る中で、自らの価値観の構築や目的の達成などに取り組めば、より多くの気づきとアイディアが生まれ、豊かで創造的に成長できるでしょう。
さらに、あなたの内的創造力を社会に生かし始めると、外界の社会は私たち人間の働きかけによって、「そのような現実」になっているが故に、あなたの自己意識は芸術・哲学・科学の活動や国家の運営を正しい方向へと導く力を強めることになります。【第7巻】
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