= 8 内界と外界の宿縁 =

【外の基準から内の基準へ】

 

 通常、私たちは子供の頃、故郷の土地に共有された文化的な価値判断や法のルール(外的基準)に実直に従って育ちます。けれども、美・善・真の探求を通じて、自らの価値判断(内的基準)を強化する中で視野を広げていくと、社会的基準と自らの内的基準を対比する心理のあやが生じてきます。

 

 人間の澄んだ心が感じる美・善・真の価値観は純粋なものですが、世人の抱く価値観には多くの不純物が混じっているからです。

 

 さらに、私たちの健全な自己意識が美的感覚の鍛錬を通じて、その視野をより深くより広くし、感性的な理解力を高めていくと、やがて、内界と外界とを天秤に掛けて宇宙全体を感じとれる時期がくるでしょう

 

 (逆に、不純な偽りを真実であると履き違え、それらに執着するほど、視野が狭くなって現実の混沌に巻き込まれていきます。)

 

【自己意識の解脱】

美・善・真
Beauty, goodness, and truth

 

 創造的に成長した人間の自己意識は、心の世界にある6つのマインド機能が、美(直感・肉体)、善(精神・愛情)、真(思考・集団)と深く関係して、人間社会にて芸術、哲学、科学の活動を促している事実を認識できるようになります。

 

 それだけではなく、その自己意識がより一層進歩し、マインド機能の存在する次元までも超越する領域に入ると、「宇宙における個々の活動には何らかの関連性が存在しており、すべてのものは一つの調和の中で美しく輝く」と達観できる境地に至ります。

 

 それは、内界の働きと外界の働きとが同時に存在する空間全体に関する一つのヴィジョンを得た境地、生命は安泰であるという直感的な感覚が深まる絶対美の境地、と言えます。  

 

【美に感動する意味】

価値観の序列
Hierarchy of values

 

 私たちの自己意識が絶対美のヴィジョンを得ると、大丈夫と思える現実が根底に置かれる癒やしの中で、生命の本質的な意味を悟り、心の世界に価値序列(美>善>真)を築けるようになります。

 

◆美の価値:生命の繁栄 

◆善の価値:世界の平和 

◆真の価値:文明の発達 

 

 たとえば、美と善の関係について、本質的に考えてみましょう。

(本質;小さな例外は捨てる)

 

 地球生命の繁栄(美)は、大自然の豊かな恵みを人類にもたらすことで世界の平和(善)の発展に貢献する。一方、世界の平和(善)によって人類が繁栄したとしても、公害や食糧問題を引き起こすなどにより、地球生命の繁栄(美)に寄与するとは限らない。故に、美>善となる。

 

 このような美・善・真の価値序列を理解したあなたの自己意識は、美・善・真の本来的な意味を理解できるようになります

 

【3つの大きな義務感】

I am not what happened to me, I am what I choose to become. Carl Gustav Jung
私は、自分に日々起きた出来事によって創られた存在ではない。私は、自分自身の意志で選択して築きあげられたものである。

 

 美・善・真の意味を悟ると、次のような3つの大きな義務を覚えるようにもなるでしょう。

 

生命を繁栄させる義務

 人々の美意識が、「美しい芸術」を発展させる中で、生命の尊厳を知り、尊重することで、社会道徳が養われる。

 

世界を平和にする義務  

 社会道徳が、「善い哲学」を発展させる中で、世界平和を求めることで、法の精神を育てられる。

 

文明を発展させる義務

  法の精神による良識あるルールが、「真の科学」を発展させる中で、文明を正しく成長させられる。

 

【美の知恵】

 

 美の本質が生命の繁栄にあることを解読、体得することで、美は知恵となり、あなたは一つの筋道をたどりながら全体像をつかめるようになります。 

 

 苦難が多い人生において、あなたは何を生かし、何を手放すかを選ぶ理由を見つけ出し、確かめながら、自らの世界観を深められるでしょう。

 

 我々人類は、何に根ざしており、どのように進むべきか? この答えを美の知恵が教えてくれるので、美を悟ったあなたの自己意識は、芸術・哲学・科学の活動や国家の運営を正しい方向へと導く力を得るはずです。

 


Man is not born to solve the problem of the universe, but to find out what he has to do; and to restrain himself within the limits of his comprehension. Goethe
人は、全世界の問題を解決するようには生まれていない。しかし、自分の限られた理解力のなかで、自分がやらなければいけないこと、そして、自制しなければいけないことは見出せるはず。