= 1 Ruleを巡る人類史 =

【国家誕生前の暮らし】


 

 大昔、原始の人々は大いなる自然のサイクルに従い、狩猟、漁猟、採取などにより糧を得て平和に暮らしていました。人間の心は身近に存在する自然への畏敬や親近を通じて、緑豊かな自然と深くつながることができる。

 

 バラエティに豊む海陸の恵みを拠り所として暮らす中で、人々は集落の習慣を通じて、明確で具体的な役割が与えられました。集落の仲間や家族とともに喜びや苦しみを分かち合い、苦難を乗り越えながら、自らの生きる意味と価値を見いだす。

 

 そして、それぞれのメンバーは良心を抱き、「自分がされたくないことを他人にしない」という気持ちを大切にして道徳観(内的基準)を作り上げます。

   

【国家と法制度】

道徳的価値観
Ethical values

  

 やがて、地球上のさまざまな地域のコミュニティに優れた指導者が現れて、国家を樹立します。ある地方の王朝は法律による秩序作りを始め、「他人の所有物を盗んではいけない。」と市民に告知。ルールを破った者には刑罰が課せられました。

 

 国のルールは、人々が意思決定の際に使用する大きな判断基準(外的基準)になっていきます。

 

 緑豊かな大自然から離れて共同体で暮らし始めた人々は、道徳的な義務(内的基準)と法的な義務(外的基準)を背負うようになり、その心は自然の秩序と社会の秩序との間で揺れ動きました。  

 


【法の精神から生まれた民主国家】

 

 18世紀になると、フランスの哲学者モンテスキューが、『法の精神』を著して三権分立を主張します。国家の法律制度について、国の権力は立法・行政・司法でバランスをとり、国民の自由と権利を保証すべし、と訴えたのです。

  

 この政治理論の影響は極めて大きく、人々は「健全なルール制度こそが平等で自由な暮らしを保証する」と信じて、立ち上がりました。フランスで市民革命が起きたのが皮切りに、世界中に民主国家が次々と誕生していくことになります。

 

【法の樹木】

Ethic and judicial system
Ethic and judicial system

 

 民主国家の法体系を樹木にたとえるなら、憲法が中心となる幹であり、刑法・民法・商法などの法律が枝となって国民の義務を定め、また、政令・省令・規則といった小さな政省令が葉となって法律実施に必要な行政手続きや命令を決めています。

 

 法律に違反する事案が起これば、裁判所で争われ、司法上の判決によって判例が生まれます。個々の判例には、特定の法律に対する裁判所の基本的な考え方が示されているので、将来における類似事件の判決を予測する上で重要な資料になります。司法の歴史にて蓄積されてきた膨大な判例が大きな根となり、法体系という樹木を支えています。 

 

 この「法の樹木」は、国の三権(国会・内閣・裁判所)を含んでおり、モンテスキューの「法の精神」を象徴したものです。

 

【内的基準の脆弱化】


 

 民主国家の立法において、国家の最高法規である憲法の理念は、道徳的な価値(内的基準)を尊重しています。

 

 それでいて、法律の執行手続きは、証拠採用主義によって合理的な事実の認定を強く要求するため、結果として、法治国のルールは人間の内的な心ではなく、人間の外的な行為を裁くことに重きを置くようになりました。

 

 司法の裁判において、犯罪者の行為を調べて処罰を下すプロセスが重視されるため、人間の道徳心(内的基準)がおろそかにされる危険性が生まれたわけです。 

  


 法とは、最も広い意味にとれば、事物の本性に由来する必然的な関係である。
Laws, taken in the broadest meaning, are the necessary relations deriving from the nature of things. Montesquieu

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